最初から最後までふりかえりに満ちた『ふりかえりカンファレンス』
『ふりかえりカンファレンス』を開催しました
こんにちは。森(びば@viva_tweet_x)です。
2021年4月10日(土)に『ふりかえりカンファレンス』を開催しました。
日本で(多分)初となる『ふりかえり』に特化したカンファレンスです。
この記事では、ふりかえりカンファレンスの発起人であり、スタッフであり、登壇者でもあり、参加者でもある私の目線で、ふりかえりカンファレンスをふりかえっていきます。
この記事を読んで、カンファレンスに参加した皆様だけでなく、ふりかえりに興味を持っている人にも、カンファレンスの楽しさが伝われば嬉しいです。
参加者・登壇者・スタッフの皆様にとっては、この記事によってカンファレンスを思い出し、ふりかえる一助となれば幸いです。
(読むのに必要な時間:10分)
『ふりかえり』に溢れたカンファレンス
Connpassより引用:
ふりかえりカンファレンスは、 ふりかえりを実践している方々、ふりかえりに興味がある方々に向け、マインドセットや新しい手法の提案などに加えて、ワークショップでふりかえりを体験できるカンファレンスです。
全世界どこからでも参加ができ、エンジニアに留まらず、どんな職種の方でもどんな業界の方でも、学生も、どなたでもご参加いただける、交流の場を目指しています。ふりかえりを体験したい方、お気軽にご参加ください。
上述のとおり、ふりかえりをテーマにした、ふりかえりに関わる人、ふりかえりに関わりたい人のためのカンファレンスです。
オンラインで行われ、一般参加113名、登壇者19名、スタッフ12名の計144名にご参加いただきました。参加いただいた皆様、本当にありがとうございます。
セッションは『インプットレーン』『アウトプットレーン』の2つのレーンに分かれ、進行していきます。
『インプットレーン』はふりかえりの事例、ファシリテーション方法、マインドセットに関するセッションを中心に集め、『聞いて学ぶ』ことに特化したものを集めています。『アウトプットレーン』はふりかえりの手法の実践、新しい手法の提案、ワークショップなどを集め、『実践して学ぶ』ことに特化したものを集めました。
2つのレーンに分けることで、こうしたカンファレンスに初めて参加する人にとっても、慣れている人にとっても、参加の目的に応じて自由にセッションを選択できるようにしたかったという想いからこのような構成にしました。
セッションは以下のような分類となりました。
- オープニングキーノート(60分) 1件
- LT(5分)8件
- 講演(20分)4件
- 講演(45分)2件
- ワーク(10分)2件
- ワーク(20分)3件
- ワーク(45分)2件
- クロージング収録(60分)1件
LT・講演は、時間いっぱい講演を聞くという形式。
ワークは「講演+ワーク」という形式になっており、参加者が実際にふりかえりを体験するような内容です。
ただ、講演セッションにも、参加者とのインタラクションを取り入れたものも多く、参加者に実際にふりかえりを体験できる場もありました。
全セッションがふりかえりの要素(学び+体験)が詰まっているセッションであり、参加者にとって新しい発見が生まれたり、過去をふりかえるきっかけになったと実感しています。
また、このカンファレンスの最大の特徴は『ふりかえり』がセッション後に必ず組み込まれていることです。
セッションの合間の休憩の時間は『ふりかえり&休憩』です。
セッションが終わるとすぐに、参加者全員でセッションのふりかえりをして、学びや気づきを共有する場があります。カンファレンス共通のMiroボードに集まり、セッションのふりかえりを書いていくのです。
セッションで学んだことを、すぐにふりかえる。そしてセッションの最中に感じたことや気持ちをその場に残しておく。そうしておくことで、後でセッションやカンファレンスをふりかえるときに、ふりかえりの効果を最大化できると信じているためです。
この考え方は「フラクタル」のふりかえりフレームワークを採用しています。
そして、最後に行われるのは『クロージング収録』という名のカンファレンス全体のふりかえりです。『ふりかえりam』のパーソナリティであり、カンファレンススタッフでもある森・KANEの2人で、インプットレーン・アウトプットレーンの全セッションをふりかえります。
参加者全員にカンファレンス全体のふりかえりを『 ファン・ダン・ラーン(FDL)」』で行いました。この人数全員でふりかえるのは圧巻の一言です。
また、1日のセッションすべてを私たちがふりかえる様子を聞きながら、記憶を引き出し、結びつけ、再構築していきます。
こうして、ふりかえりのことをひたすら学び、ふりかえりを細かく繰り返し、最後にふりかえりをして、次につなげていく。そんな1日が過ぎていきます。
また、カンファレンスの1週間後には「公式後夜祭」として、ふりかえりカンファレンスを参加者で改めてふりかえる機会もあります。
(こちらは参加者限定ですが、空いている方はぜひご参加ください)
ふりかえりで始まる、ふりかえりで終わる。そんなカンファレンスが『ふりかえりカンファレンス』です。
ふりかえりの楽しさ・奥深さを伝えたい
このカンファレンスは、私が2年間、夢に見てきたものの1つでした。
「ふりかえり」に特化した話を1日中話したい。
聞きたい。
実践したい。
そして一緒に語らいたい。
そんなカンファレンスを開いてみたい。
この想いは、実は2019年から心のうちに秘めていました。
きっかけだったのは、当時私がよく参加していたDevLOVEというコミュニティの10周年イベントである『DevLOVE X』。
さまざまな道で活躍されているスペシャリストたちが発表する、まさにお祭りでした。
その頃、私は『ふりかえり実践会』でふりかえりを実践出来るワークショップを定期的に開催したり、『ふりかえり読本 場作り編~ふりかえるその前に~』を書き上げて「楽しいふりかえり」を世に広げるために尽力していました。
そんな中で「DevLOVE X」が開催される情報を目にしたとき、私の中にある思いが浮かびました。
私もお祭り感のあるイベントを開きたい。
私が愛している「ふりかえり」で、これだけの人たちが集まるようになったら、どんなに素晴らしいことだろう。
私も彼らのように誰かに影響を与えられるようになりたい。
そしてそれが「ふりかえりって楽しいんだ」という思いを抱いてくれたら最高だ。
当時の私には「カンファレンスを企画する」ことに、自分に出来るのだろうかという不安、人が集まるのだろうかという不安など、不安でいっぱいでした。
これらの想いは誰にも言わずに、そっと閉じ込めていました。
そうして時が経ち、『ふりかえり実践会』のイベント実行回数も増え、イベント企画にも慣れていったり、『Regional Scrum Gathering Tokyo』や各地での『スクラムフェス』に参加して、様々な人たちと関わりを広げていくうちに、「この人たちに想いを伝えれば、実現できるかもしれない」という想いが強くなっていきました。
また『ふりかえりam』で何十時間も一緒に収録を続けてきたKANEさんと一緒なら、きっとなんとかなるだろうという信頼もありました。
そうして「やってみようかな」という想いを伝え、生まれたのが『ふりかえりカンファレンス』です。
カンファレンス企画時から「ふりかえり」を大切にしていく
ふりかえりカンファレンスはこんなふうに始まりました。
最初に『ふりかえり実践会のDiscord』で想いを伝え、カンファレンス企画・運営に興味のある人を募りました。当時は私が『ふりかえりガイドブック』の執筆で忙しかったのもあり、ベストエフォートで無理なく、スモールスタートで、を信条にして、それを伝えています。
そうして集まってくれた仲間と、最初のミーティングをZoomで行い、HackMDでメモを書き連ねながらカンファレンスの企画をスタートさせました。
最初に全員で決めたルールは、こちらです。
ミーティングの最後には、必ず楽しくふりかえる。これがチームの中心となったルールです。毎回21時にミーティングを開始し、23時に終わる。そんな流れを毎回続けていく中で、21時40分ごろからはふりかえりが始まります。
ミーティングのふりかえりでも「必ず改善しなきゃ」ということもなく、楽しくふりかえりを実践することに注力していました。
全13回行われた運営のミーティング。約26時間の中で、ふりかえりカンファレンスの形が徐々にできあがっていきました。
ふりかえりの中でも、新しい手法が生まれていきました。新しい手法は★をつけています。
- Fun, Joy, Keep, Learn, Problem, Try, Action★
- ORID
- ポジティブ星人
- 3Ls
- ふりかえりカンファレンススタッフチームの心得
- Mad(怒), Sad(悲), Glad(喜)
- ハピネスレーダー
- KPT
- ひな祭り(三人上戸)★
- 象、死んだ魚、嘔吐
- ホワイトデー ★
- Fun / Done / Learn
- Good & Bad & Next
みんなでふりかえりのやり方をさくっと話し合って、新しい手法を生み出すときには生み出して、hackMDに書いていき、自発的に共有する。その場で新しいActionやバックログが生まれたら、すぐに実行するか、積んでおく。
そんな形で、計13回のふりかえりをしながら、ふりかえりカンファレンスは生まれていきました。
カンファレンス企画・運営はアジャイル・スクラムな形で
ミーティングにはMiroのボードを使いながら進めていきました。
左の縦長のものがバックログ。毎回打ち合わせの最初に「今後何をすべきか」というバックログを挙げる『プロダクトバックログリファインメント』を行い、「今日何をするか」という『スプリントプランニング』を実施し、打ち合わせの情報はすべてMiroに書き残していきます。そして打ち合わせの最後には『次回以降何をすべきか』が見えてくるので、改めて『プロダクトバックログリファインメント』を行い、最後に『ふりかえり』をして終了。実際にはスクラムでやる、スプリントを重ねる、という意思共有は何もしていませんでしたが、自然とこうした形で進めていきました。
カンファレンス運営が初めてのメンバーも多く、分からないことも多かったですが、他のカンファレンスの情報を参考にしてみたり、経験者から話を聞いてみたりしながら、自分たちの出来る範囲を次第に広げていきました。
ミーティングも、ミーティング外の参加や活動はベストエフォートです。ミーティングのなかでモブで進めていくのが基本で、ミーティング外で何かを積極的にした、というのはあまりなかったように思います。
私も全13回のミーティングのうち、2回はお休みして他の方に進めていただきましたが、いい感じに進んでいました。ありがとうスタッフの皆さん。
スタッフが互いに信頼しあって、自分の出来る範囲を無理なくやる、という「長所を活かし合う」スタイルが、運営でうまくいったポイントかなと思います。
なお、あとで運営そのものをふりかえれるかな、とも思い、ミーティングの様子はすべてZoomで録画してYoutubeに上げています(※スタッフ限定でURL公開しています)が、こちらはいつか使われることになるかもしれません。
そして、ふりかえり溢れるカンファレンスになった
そして当日。
スタッフの献身的な協力、参加者の盛り上がり、登壇者の素晴らしい発表。これらが化学反応を起こし、すばらしいカンファレンスを行うことができました。
来年もやりたい。そんな気持ちが出てきたため、来年の開催もする予定です。
今回の登壇者の皆さんにもじっくりお話を聞かせていただきたいとも考えていますので、今後ふりかえりamで登壇者の方に再演していただく機会を作らせていただきたいと思います。
ふりかえりの楽しさを、広げる。
今後も、私や『ふりかえりカンファレンス』では、ふりかえりの楽しさ・奥深さを広げていきます。ぜひ、みなさんにも、「こういうふりかえりをしてみた」「楽しいやり方を見つけた」「こういう考え方もあるよね」といったものが見つかったら、発信してみてください。
ふりかえりの世界が、これからも広がっていくのを楽しみにしています。