SCRUM BOOT CAMP THE BOOK【増補改訂版】にふりかえりのコラムを書きました
2020/05/20に、翔泳社から「SCRUM BOOT CAMP THE BOOK」の増補改訂版がリリースされました。
今回、私はふりかえりに関する2つのコラムを寄贈させていただきました。
SCRUM BOOT CAMP THE BOOKについて
この本は、アジャイルやスクラムに入門しようとしている人、悩みを抱えている人たちにとって、勇気を与えてくれる本です。
読者の分身であるボク君が、少しずつスクラムを学び、実践し、成長していきます。そして、様々な場面で起こる「躓き」に対して、ボク君が「困った!どうしよう!」というところから説明がスタートします。この「躓き」は、スクラムを実践するうえで多くの人が経験するであろうものが散りばめられています。
読者のそれぞれの環境やその時々の状況によって、本の中でも心に刺さる場面は異なるでしょう。でも、どの面でも、「そこでも悩みが発生するんだ、してもいいんだ」という共感と、そこから抜け出そうという一歩の始めかたを提示してくれています。
ここから得られる勇気は、きっとどの読者も共通して感じるのではないでしょうか。
私とSCRUM BOOT CAMP THE BOOK
私がこの本を読んだのは2017年4月。私自身がスクラムに取り組み始めたとき、はじめて手に取った本がこの本でした。
スクラムガイドよりも、この本の存在を先に知りました。
当時はまだスクラムチームを立ち上げようとしていた段階で、周りも手探り。そんな中、この本はサクッとよめ、全体像を理解させてくれました。何もわからない状態から、「なんとなく理解した」「動ける」状態にしてくれたのは、この本があってこそだったと思います。
読み始めた時期と同時に、スクラムマスターとして活動を始めたため、ボク君は私の分身でもありました。
スクラムにはない「カンバン」という概念を知ったり、ベロシティとは何かを知ったり。躓いたときに読み直してみよう、という本として、チームの本棚にずっと置いてありました。
スクラムの実践を続け、少しずつスクラムのことが分かるような気になってからは、他の本も色々読み漁りました。
エッセンシャルスクラム、カンバン仕事術、エクストリームプログラミング。本から得た知識を試し、改善する、という流れのなかで、私も少しずつスクラムやアジャイルの考え方が好きになっていき、生活になじむようになっていきました。
いつしか、色々な人の手に渡りながら、チームの本棚から部署の本棚へと移されたこの本は、たまに読み返すと、「確かにこういう経験をしたなぁ」「次はこうしてみよう」という新たな発見をくれるものでした。
私も、なんだかんだで年に2回は流し読みしていたように思います。
そんな本が、今年、改訂されました。
スクラムの経験を積んでいく中でつながった、著者の西村直人さんとの縁により、コラムを書かせていただく機会をいただくことができました。
SCRUM BOOT CAMP THE BOOKとふりかえり
この本には、「スプリントレトロスペクティブ」「ふりかえり」に関する記載がほとんどありません。
入門となる本でありながら、スクラムのイベントの1つであるスプリントレトロスペクティブには詳しく触れられていません。 この本を読んでスクラムをやってみよう、と思った人は、困ってしまうかもしれません。
今になってみると、詳しく書かれていないのも、なんとなく分かる気がします。 この本に「ふりかえりはこうするんだ」ということが書かれていたら、きっと多くの人はその通りにやってみるでしょう。
ただ、ふりかえりは、きっと最初はうまくいきません。
頭の中に「仮想の正解(理想のふりかえり像)」を思い浮かべてふりかえりをして、その通りにできなくて、「思うようにうまくいかなかった」と感じてしまうのは当然のことです。
そもそも、ふりかえりに正解はないのです。私はそう思っています。
ふりかえりは、探索的な活動です。決まったやり方があるものではなく、チーム皆で形成していく「場」そのものがふりかえりの形になります。
ふりかえりだからカイゼンしないといけない。ふりかえりだからアクションをする人はしっかり決めておかないといけない。そういうことに縛られてしまっては、チームの成長にはいつしか限界が来ます。
あえて答えを見せないことで、「自分たちで答えを探す」「やってみる」「実験してみる」「新しいことに挑戦してみる」というようになってほしい。
そんな気持ちが、著者陣にはあったのかもしれません(勝手に想像してるので違っていたらツッコミをお待ちしています)。
私とSCRUM BOOT CAMP THE BOOKとふりかえり
私は、アジャイルに触れてからずっとふりかえりを探求し続けてきました。
新しい手法を100個以上やってみたり、他のチームにファシリテーションをしてみたり、自分で手法を生み出してみたり、ふりかえりの研修をしてみたり、ふりかえりの本を出してみたり。
最近だとふりかえりに関するPodcast「ふりかえりam」もはじめました。それくらい、ふりかえりがとても楽しく、今でも底が見えない、探求しがいのあるものだと思っているから、探求を今でも続けています。
そんな私だからこそ、これからふりかえりを始めようとする、スクラムをはじめようとする人たちに伝えられるものがあるはずだと思っています。
アジャイルやスクラムのなかで、多くの人が最初に手をつけようとする部分は、「ふりかえり」です。
きっと、読者の中にも、ふりかえりについて不安になってしまう人もいる、と考えています。
この本には、そうした読者のために、「ふりかえりのマインドセット」と、最初に知っておいてほしいものを2つのコラムに詰め込みました。
ふりかえりの中では、誰もが迷っていいし、失敗しても問題ありません。
不安にならずに、むしろ楽しい活動として、様々な実験をして、チームを変えていく起点にしてほしい、という想いを込めています。
この本や、コラムを通じて、あなたの不安を少しでも軽くできたら、と思っています。
最後に
SCRUM BOOT CAMP THE BOOKはとても良い本です。
皆さんの不安と同じような不安を、主人公のボク君も感じ、分かち合ってくれます。きっと、前に進む勇気をくれるはずです。
チームに1冊、職場に1冊、是非お手元に置いて、読んでみてください。
また、5/4(木) 20:00~は、本の発行イベントが開催されます。 お時間のある方は、是非ご参加ください。
※ふりかえりをもっと知りたい!という人は、ふりかえりのみを探求した、こちらのシリーズも一緒にお楽しみいただければ幸いです。 hurikaeri.booth.pm